浄土寺と阿弥陀三尊立像
浄土堂は、大仏様(だいぶつよう)という建築様式の建造物で、堂内には名仏師快慶作の阿弥陀三尊立像があります。共に国宝に指定されています。
浄土堂
とても珍しい建築様式「大仏様」
浄土堂は、浄土寺の開祖「重源上人(ちょうげんしょうにん)」によって建立されました。大仏様は、中国の宋に渡ったことのある重源が取り入れた建築様式です。大仏様の建物は、東大寺の南大門と浄土寺浄土堂の二つしか残っていません。東大寺南大門は門であることから、仏堂建物としては、浄土堂が唯一のものとなります。大仏様の特徴
大仏様は、大きな木造建築に適した頑丈な造りで、様々な特徴があります。
巨大な柱
浄土堂は、一辺がたった4本の巨大な柱によって支えられています。柱と柱の間、「柱間(はしらま)」は約6mと広く、柱の間が3間(げん)となることから、浄土堂の一辺の規模は、6m×3間で18mとなります。
一般的な柱間は、4m程度と言われることから、その巨大さがわかります。柱に使用されているヒノキの巨木は、当時でも貴重でありました。
柱間6mを実現した「貫(ぬき)」
柱には「貫」が差し込まれています。柱の途中に貫を入れることで、木組みが強固になり、柱間を広げた堂内の大空間をつくることに成功しています。
「挿肘木(さしひじき)」
四天柱から四隅に向かっては、両端を柱に突き差した太い「虹梁(こうりょ)」が放射状に伸びています。虹梁は柱に根元を挿し込んだ「挿肘木(さしひじき)」によって支えられています。
美しい「隅扇垂木(すみおうぎたるき)」
四隅の垂木は、扇状に並べられている「隅扇垂木」です。見た目の美しさだけでなく、重い本瓦葺の屋根を補強する意味があります。
てこの原理を使った「遊離尾垂木(ゆうりおだるき)」
垂木を支えるための部材として、「てこの原理」を応用した「遊離尾垂木」があります。真ん中の支点が力を分散化し、重い屋根を支えています。機能性を兼ね備えた大仏様の特徴の一つです。
朱と白が織りなす、美しい堂内
堂内は天井が張られてなく、朱く塗られた垂木と、白色に塗られた「野地板(のじいた)」を見通せます。朱と白のコントラストが美しいことから「化粧屋根裏(けしょうやねうら)」と呼ばれています。
朱色の梁には、白い錫杖が彫られています。放射状の朱色と白色で、仏様を中心に後光が射しているように見えます。
朱色の梁には、白い錫杖が彫られています。放射状の朱色と白色で、仏様を中心に後光が射しているように見えます。
御朱印
堂内の受付にて「御朱印」を承っています。
阿弥陀三尊立像
巨大な阿弥陀様のお姿
浄土堂の本尊は、名仏師「快慶(かいけい)」による阿弥陀三尊立像で、堂内中央の円形須弥壇(えんけいしゅみだん)」上に立っています。来世を信じる人々に、御来迎(ごらいごう)のお姿を、実際に見せようとしたものです。「阿弥陀如来 (あみだにょらい) 」像は像高5.3m、「両脇侍立像(りょうわきじりゅうぞう)」は像高3.7mもある巨大な三尊像です。 本尊の両手の上げ下げが一般的な仏像と逆で、「観音菩薩(かんのんぼさつ)」像と「勢至菩薩(せいしぼさつ)」像の配置も、一般的な配置と違い左右逆さになっています。これは、快慶が宋の仏画を参考に作られたからと言われています。360°お姿を見ることができます
●三尊像は、九つある極楽浄土で「中品中生」の位置に鎮座されています。普通は上座である「上品上生」に鎮座されますが、浄土堂の阿弥陀様は「できるだけ早く救いたい」という思いから、民衆に近い所に鎮座されていると言われています。●三尊の幹部材は、須弥壇を貫通し、床板の礎石に達して堂と一体化。建物全体で巨像を支えています。
●阿弥陀三尊は、わずかに前に傾いています。「西方極楽浄土から飛雲に乗って来迎」する情景を表していると言われています。
●中品中生におられる阿弥陀如来像は、後ろ姿も見ることができます。阿弥陀三尊が乗っている運座の下にはたなびく雲が表現されていて、颯爽と飛来した様子をうかがうことができます。
阿弥陀如来像
●阿弥陀如来像のお姿は、全身を覆う簡素な衣を身に纏っています。装飾品を身につけていないのは、悟りを開いた釈迦の姿を表しているからです。
●阿弥陀如来像の指の形「印相」は、親指と中指が接する「中品(ちゅうぼん)」を表しています。長い指の爪は「多くの人々を救えるように、長く伸びた」と言われています。
●阿弥陀如来像の指の形「印相」は、親指と中指が接する「中品(ちゅうぼん)」を表しています。長い指の爪は「多くの人々を救えるように、長く伸びた」と言われています。
観音菩薩像・勢至菩薩像
脇侍の菩薩像は、それぞれ華やかな冠や飾りをつけ、手に持物(じもつ)を持っています。左の観音菩薩像はハスを持っておられ、「泥のような世間からもキレイな花を咲かす」という意味があります。また、右の勢至菩薩像は「宝瓶(ほうびょう)」という水を持っておられ、水を注ぐことで「仏様の知恵を授かる」という意味があります。
光の動き、時の流れ・・・ 。心から洗われるような、極楽浄土の世界。
浄土堂内に夕日の頃、西側の蔀戸(しとみど)から夕日が射し込み、ヒノキの床に反射して赤い垂木の屋根裏を照らし、それが本尊にふりそそぎます。やがて堂内全体が赤く染まると、阿弥陀三尊立像が幻想的に浮かび上がります。これは、阿弥陀様が雲に乗って西方極楽浄土からお迎えにくるという「御来迎」の姿を見せようとする、光の演出効果を狙ったものです。
光のアートを見るには…
陽が沈む頃ではなく、少し前にきて、ゆっくりと陽の流れを見るのがおすすめです。夏場は16〜17時頃、冬場は15〜16時頃に高めの西日が差し込み、徐々に屋根裏に反射して、阿弥陀三尊立像を照らし出します。